「訪問看護・訪問リハに転職したけど、3ヶ月で辞めて
「面接で聞いていた話と、実際の現場が全然違った…」
訪問看護・訪問リハへの転職で失敗するPT・OT・STは、決して少なくありません。
厚生労働省が2026年3月に公表した「医療等分野における雇用仲介事業に関する調査研究事業」報告書によると、紹介会社経由で訪問看護・訪問リハに就職したリハ職の6ヶ月以内離職率は15.00%でした。
つまり、紹介会社を使って転職した7人に1人が、半年以内に辞めているという衝撃的な事実が明らかになりました。
この記事では、厚労省調査のデータをもとに、なぜ転職で失敗する人が多いのか、その特徴と、失敗を防ぐための具体的なチェックポイントを解説します。
紹介経由の離職率15%が意味すること

厚生労働省の調査が示した数字は、訪問看護・訪問リハ業界の深刻な課題を浮き彫りにしました。
紹介会社経由の離職率は、非紹介経由の約3倍
介護分野(訪問看護ステーションを含む)で、紹介会社経由で就職したリハ職80人のうち、6ヶ月以内に離職したのは12人。離職率は15.00%です。
一方、紹介会社を使わずに就職した95人のうち、離職したのは5人。離職率は5.26%。
紹介会社経由の方が、約2.9倍も離職率が高いのです。
7人に1人が半年以内に辞める現実
離職率15%という数字を別の角度から見てみましょう。
紹介会社を使って訪問看護・訪問リハに転職した人のうち、およそ7人に1人が半年以内に辞めている計算です。
- 1ヶ月以内の離職率は3.75%(約27人に1人)
- 3ヶ月以内の離職率は8.75%(約11人に1人)
- 6ヶ月以内の離職率は15.00%(約7人に1人)
時間の経過とともに離職率が上昇していることから、「入職後にギャップを感じ、徐々に辞めていく」パターンが多いことが分かります。
施設側も深刻な被害
早期離職は、求職者だけでなく施設側にも大きな損失を与えます。
- 紹介手数料:平均95.8万円
- 返戻金がない:17.4%
- 返戻金が手数料の25%未満:39.7%
つまり、半年以内に辞められても、施設側は50万円以上の手数料を失うケースが多いのです。
さらに、早期離職後「そのまま欠員になってしまった」施設が54.6%。採用コストだけでなく、人材不足という深刻な課題も残ります。
この数字が意味すること
離職率15%は、単なる統計ではありません。
「紹介会社を使った転職が、必ずしも成功につながらない」 「ミスマッチが構造的に起きている」
この現実を、直視する必要があります。
転職で失敗する人の3つの特徴
厚労省調査と、私たち「はじめての訪問看護」の相談実績から見えてきた、転職で失敗する人の3つの特徴をご紹介します。
特徴① 給与・休日だけを見て応募する
「月給35万円!」 「週休2日・残業少なめ!」
求人票の条件面だけを見て、「ここ良さそう!」と即決してしまう人は、失敗するリスクが高いです。
訪問看護・訪問リハの働きやすさは、給与や休日だけでは測れません。
・1日の訪問件数は何件か?
・移動時間・記録時間はどのくらいか?
・教育体制は整っているか?
・同行訪問の期間はどのくらいか?
・セラピストは何人いるか?
これらを確認せずに入職すると、「月給35万円だけど、みなし残業30時間込みだった」「訪問6件+記録で毎日10時間労働」といった現実に直面することがあります。
固定残業代がある求人では、基本給の額、固定残業に含まれる時間数、超過分の割増賃金が支払われるかまで確認しておくと安心です。
特徴② 訪問看護・訪問リハの実態を理解していない
「訪問看護なら病院より楽そう」 「1日数件訪問するだけでしょ?」
こうしたイメージだけで転職を決める人も、失敗しやすいです。
訪問看護・訪問リハは、病院勤務とは全く異なる働き方です。
訪問リハビリテーションでは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが利用者の生活の場に訪問して支援するため、事業所の体制や訪問件数、記録時間、相談できる環境によって働き方は大きく変わります。
・訪問中は一人で判断する場面がある
・利用者宅という「密室空間」での対応
・移動時間・記録時間が意外と多い
・天候の影響を受ける(雨・雪・猛暑)
・利用者・家族との人間関係が難しい
こうした「訪問看護の実態」を理解せずに転職すると、入職後に「思っていたのと違う…」と後悔します。
特徴③ 見学・質問をせずに面接だけで決める
「面接の雰囲気が良かったから」 「アドバイザーが勧めてくれたから」
見学をせず、面接だけで入職を決めてしまう人も、失敗するリスクが高いです。
面接では「良い面」しか見えません。
・教育体制が整っていると言われたが、実際は放置
・アットホームな職場と聞いたが、実際はピリピリした雰囲気
・先輩が丁寧に教えてくれると聞いたが、先輩が忙しくて質問できない
こうしたギャップは、見学をしないと分かりません。
3つの特徴に共通すること
転職で失敗する人の共通点は、「事前の情報収集が不足している」ことです。
・給与や休日だけで判断
・訪問看護の実態を理解していない
・見学や質問をしていない
この3つが揃うと、ミスマッチが起きる可能性が非常に高くなります。
訪問看護・訪問リハの転職で失敗しないために確認したいこと
訪問看護・訪問リハへの転職で失敗を防ぐには、求人票の条件だけで判断しないことが大切です。
月給や休日数だけを見ると魅力的に見えても、実際には訪問件数が多すぎたり、記録時間が勤務後に残ったり、相談できるリハ職が少なかったりすることがあります。
特に未経験で転職する場合は、次の点を必ず確認しておきましょう。
教育体制と同行訪問の有無
未経験者にとって、教育体制と同行訪問の有無はとても重要です。
「未経験歓迎」と書かれていても、実際にどのくらい同行訪問があるのか、独り立ちまでの流れが決まっているのか、訪問後に振り返りの時間があるのかは職場によって違います。
入職後すぐに一人で訪問する職場では、不安を抱えたまま働くことになりやすいため、面接や見学で具体的に確認しておきましょう。
訪問件数・移動時間・記録時間
訪問看護・訪問リハでは、1日の訪問件数だけでなく、移動時間や記録時間も働きやすさに大きく影響します。
同じ5件訪問でも、移動距離が短く記録時間が確保されている職場と、移動範囲が広く勤務後に記録が残る職場では、負担感が大きく変わります。
平均訪問件数、移動手段、訪問エリア、記録のタイミング、残業の実態まで確認しておくと安心です。
給与の内訳とインセンティブ条件
給与を見るときは、月給の総額だけで判断しないようにしましょう。
基本給、固定残業代、資格手当、訪問手当、インセンティブ、賞与、退職金の有無まで確認することが大切です。
インセンティブ制度がある場合は、何件から支給されるのか、1件あたりいくらなのか、キャンセル時はどうなるのか、実際にどのくらい支給されているのかも確認しておきましょう。
リハ職の人数と相談体制
訪問看護ステーションでPT・OT・STとして働く場合、リハ職の人数や職種構成も重要です。
リハ職が少ない職場では、同じ職種に相談しにくく、未経験者が孤立しやすいことがあります。
PT・OT・STが何人在籍しているのか、未経験者を受け入れた実績があるのか、困ったときに誰へ相談できるのかを確認しておきましょう。
見学で職場の雰囲気を確認する
面接だけでは、職場の雰囲気まではわかりにくいです。
可能であれば、入職前に見学をして、スタッフ同士の会話、看護師とリハ職の連携、記録の様子、管理者の雰囲気などを確認しましょう。
「アットホーム」「相談しやすい」といった言葉だけで判断せず、自分の目で見て確認することが、入職後のミスマッチを防ぐために大切です。
実際にあった失敗事例5選──こうして転職は失敗する
厚労省調査の「離職率15%」という数字の背後には、一人ひとりのリアルな失敗体験があります。
ここでは、実際に訪問看護・訪問リハへの転職で失敗したPT・OT・STの事例を5つご紹介します。
失敗事例① 「即戦力」を求められ、初日から一人で訪問
Aさん(PT・経験2年・20代後半)の失敗
病院で2年間働いた後、「訪問看護でスキルアップしたい」と転職を決意。紹介会社から「教育体制が整っている」と聞いて入職を決めました。
しかし入職初日、管理者から「今日から一人で訪問してもらいます。利用者リストはこれです」と言われ、マニュアルも同行訪問もなくいきなり一人で訪問させられました。
利用者の自宅で何をすべきか分からず、利用者から「前の先生と違う」と言われても対応できず。訪問中に利用者の状態が急変しても、どこに連絡すればいいか分からずパニックに。
先輩に相談しようとしても「自分で考えて」と突き放され、1ヶ月で精神的に限界を迎え退職。
失敗事例② 高給与に惹かれて入職→みなし残業地獄
Bさん(OT・経験4年・30代前半)の失敗
前職の月給は28万円。紹介会社から「月給38万円の求人があります」と紹介され、「10万円も給与が上がる!」と即決しました。
しかし入職後、気づいたことがあります。
・月給38万円の内訳:基本給25万円+みなし残業手当10万円
・1日の訪問件数:6件
・移動時間:1日2時間以上 ・記録時間:毎日2時間(勤務時間外)
毎日朝8時出勤、退勤は19時。みなし残業40時間を軽く超えても、残業代は出ませんでした。
体力的に限界を感じ、3ヶ月で退職。
失敗事例③ 「アットホームな職場」の実態は人間関係最悪
Cさん(ST・経験3年・20代後半)の失敗
前職の人間関係が辛く、「アットホームな小規模ステーションで働きたい」と転職。
紹介会社から「少人数でアットホームな職場です」と紹介され、面接の雰囲気も良かったので入職を決めました。
しかし入職後、職場の実態が見えてきました。
・管理者が威圧的で、少しのミスでも激しく叱責
・先輩セラピストが派閥を作っており、新人は無視される
・休憩時間も常に誰かの愚痴・悪口を聞かされる
「アットホーム」どころか、常にピリピリした雰囲気。精神的に追い詰められ、4ヶ月で退職。
失敗事例④ 訪問看護の「リアル」を理解せず、イメージだけで転職
Dさん(PT・経験1年・20代前半)の失敗
病院勤務が忙しく、「訪問看護なら病院より楽そう」というイメージで転職。
紹介会社のアドバイザーも「訪問看護は自分のペースで働けますよ」と勧めてくれました。
しかし入職後、想像と全く違う現実に直面しました。
訪問中は一人で判断しなければならず、常に不安で利用者の家族から理不尽なクレームを受けても逃げ場がないなど、「病院より楽」どころか、「一人で全て判断する責任の重さ」に耐えられず、2ヶ月で退職。
失敗事例⑤ セラピスト1人体制→相談相手ゼロで孤立
Eさん(OT・経験2年・20代後半)の失敗
紹介会社から「新規立ち上げのステーションで、あなたが最初のセラピストです。
やりがいがありますよ」と紹介され、「責任ある立場で働ける!」と入職を決めました。
しかし入職後、セラピスト1人体制の厳しさを痛感しました。
・相談できるセラピストが誰もいない
・利用者の評価・訓練が適切か、誰にも確認できない
・困った時に助けてくれる先輩がいない
・看護師に相談しても「セラピストのことは分からない」と言われる
孤独と不安に耐えられず、3ヶ月で退職。
5つの失敗事例に共通すること
これら5つの失敗事例には、共通点があります。
✗ 事前の情報収集が不足していた
✗ 「言葉」だけを鵜呑みにし、実態を確認しなかった
✗ 見学・質問をせずに入職を決めた
✗ 訪問看護の「リアル」を理解していなかった
逆に言えば、これらを避ければ、転職の失敗を防ぐことができます。
良い紹介会社・アドバイザーの見極め方

紹介会社を使うこと自体が悪いわけではありません。
問題は、「訪問看護の実態を知らないアドバイザーに任せてしまうこと」です。
良いアドバイザーの特徴
特徴① 訪問看護の現場を知っている
良いアドバイザーは、訪問看護・訪問リハの「リアル」を包み隠さず伝えます。
✓ 1日のスケジュールの実態
✓ 移動時間・記録時間の負担
✓ 教育体制の有無
✓ 一人で訪問する際の判断の難しさ
「良い面」だけでなく、「大変な面」も正直に話してくれるアドバイザーを選びましょう。
特徴② 求職者の適性を見て提案する
良いアドバイザーは、求職者の経験・スキル・希望に合ったステーションを提案します。
✓ 未経験者には教育体制が整ったステーション
✓ 時短希望者には訪問件数4件以下のステーション
✓ 高収入希望者には訪問件数6件のステーション
「この求人、良いですよ」と安易に勧めるのではなく、「あなたに合うのはこういうステーションです」と提案してくれるアドバイザーを選びましょう。
特徴③ 見学・質問を促してくれる
良いアドバイザーは、見学を強く勧めます。
「面接で決めずに、必ず見学に行ってください」 「見学時にこういう質問をしてください」
見学をスキップさせようとするアドバイザーは、成約を急いでいる可能性があります。
特徴④ 入職後もフォローしてくれる
良いアドバイザーは、入職後の悩みにも寄り添います。
「入職後、困ったことがあればいつでも相談してください」
入職後のフォローがあるかどうかは、事前に確認しましょう。
悪いアドバイザーの特徴
逆に、こんなことを言ってくるアドバイザーは要注意です。
✗ 「この求人、競争率高いので早く決めた方がいいですよ」
✗ 「給与が良いので、少しくらい条件が合わなくても大丈夫ですよ」
✗ 「見学はしなくても大丈夫です」 ✗ 「入職後は自分で頑張ってください」
後悔しない転職のために

厚労省調査が示したのは、「紹介会社を使った転職が、必ずしも成功につながらない」という現実です。
失敗を防ぐための3つのアクション
アクション① 訪問看護の「リアル」を事前に理解する
1日のスケジュール 、移動時間、記録時間、一人で訪問する際の判断、利用者・家族との人間関係など、これらを理解した上で、「自分に合っているか」を判断しましょう。
アクション② 5つのポイントを必ず確認する
教育体制、同行訪問の期間、日のスケジュール、セラピストの人数、職種構成、給与の内訳、職場の雰囲気などを確認せずに入職を決めてはいけません。
アクション③ 現役セラピストに相談する
訪問看護の現場を知らないアドバイザーではなく、現役の訪問看護セラピストに相談しましょう。
リアルな情報をもとに、自分に合ったステーションを選ぶことができます。

